はじめに

本書の執筆は、決して筆者一人の力では成し得なかった。この一冊が世に出るまでに、多くの人々との出会いと対話が、筆者の中に「構造」という視点を育んだのである。

感謝の意を表したい人々は数多く存在する。これまで筆者を自由に活動させてくれた家族、多大な迷惑をかけた元同僚や上司、様々な教えを与えてくれた先輩方、日々共に働く会社のメンバー、構造の先にある未来を信じてくれる仲間、そして言葉にならない想いを支えてくれる友人たち。これらの出会いと対話の全てが、筆者の「構造」への理解を深める礎となった。

筆者は、特別に「構造」を意識して生きてきたわけではない。ただ、目の前の複雑な現実を解きほぐし、持続可能な未来を築こうと考え続けているうちに、いつの間にか「構造」という言葉が、筆者の中で深く響き続けるようになったのである。

この過程は、構造力が単なる机上の概念ではなく、実践的な問題解決と未来構築の連続から自然発生的に生まれるものであることを示唆している。構造力は、知的な構築物であるだけでなく、複雑性への実践的かつ直感的な対応能力である。

本書で定義する「構造力」とは、以下の通りである。

構造力=<描く>×<動かす>

目的・関係・順序設計し、実装まで回し続ける総合スキル

この定義は、構造力が単なる戦略立案や理論的枠組みを超え、概念化と具体的な行動との間の重要なつながりを強調するものである。

完璧な計画であっても、それを動かし、適応させる能力がなければ無意味であるという考え方が、本書全体を貫く核心となる。構造力は、ビジョンと現実の間の橋渡し役となり、問題解決と未来構築への全体的なアプローチを提供する。

筆者の人生のこれまでの集大成を、これまで関わってくれた方々、そして今も筆者に関わってくれている方々に贈る。ぜひ本書を手に取り、読者自身の考えを深めてみてほしい。

TOMOHIRO NAKAGAWA